現在、当院では原則として、TOLAC(帝王切開後の経腟分娩の試み)を中止しております(TOLACが成功した場合がVBACです)。当院ではTOLACを行ってきた期間中、大きな問題は発生していませんでした。
しかし、医療技術の進歩により、お母さんも赤ちゃんも安全に出産できるようになりました。そのため、リスクのある分娩方法を取る場合、もしもの時に備えた設備や技術を持った小児科や麻酔科の医師が常駐している環境のほうが望ましいと考えています。
以下の文章は、以前のTOLACに関する情報です。現在でも参考になる内容ですので、そのまま掲載しております。ご参考にしてください。
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この文章は、以前に帝王切開で出産された妊婦さんが、今回の分娩方針として経腟分娩または帝王切開のどちらかを選ぶ際に、それぞれのメリットとデメリットを理解していただくために作成したものです。わからない点がありましたら、どのようなことでも受診時に遠慮なくお尋ねください。どちらの分娩方法を選択されても、私たちは最善の対応を目指します。また、いったん同意された後でも、それを撤回することもできます。
帝王切開の既往がある場合の経腟分娩では、母児双方に重篤な危険を引き起こす子宮破裂の発生率が高いことが知られています。経腟分娩を行うためには以下の5項目を満たす必要があります。
また、経腟分娩を予定していても、母体や胎児の状態により帝王切開に切り替わる可能性があること、子宮破裂の症状が分娩中だけでなく分娩後にも起こることがありますので、これらにも留意してください。
経腟分娩の成功の確率は以下の要因により推測されます。
以上のことを患者さんとご家族に十分に説明したうえで、安全でかつ満足のいくお産ができるように努力させていただいています。
ちなみに、どちらも経験した妊婦さんにお聞きすると、経腟分娩、帝王切開分娩のどちらが楽だとか、どちらがいいお産だとか、そういうものではないようです。一人目が帝王切開、二人目が経腟分娩の患者さん、その逆に一人目が経腟分娩、二人目が帝王切開の患者さん、どちらの患者さんにお聞きしても「どっちもそれなりに大変だし、産み方によって赤ちゃんに対する愛情が変わるわけではない」とおっしゃいます。
実際にVBACが成功した患者さんの中には、分娩中、分娩直後には「経腟分娩がこんなに大変だと思わなかった。これなら帝王切開のほうがよかったかも」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、三日目ぐらいになると「やっぱり楽」とか「赤ちゃんとはやく触れ合えてうれしい」と喜んでくれるようになります。
繰り返しになりますが、どちらの選択をなさっても、ご本人とご家族が「いいお産だった」と思えるように精一杯努力させていただきます。ご家族で十分にご相談の上、決定していただければと思います。