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有秋台医院

30 JUL
2024

TOLAC(帝王切開後の経腟分娩の試み)について

現在、当院では原則として、TOLAC(帝王切開後の経腟分娩の試み)を中止しております(TOLACが成功した場合がVBACです)。当院ではTOLACを行ってきた期間中、大きな問題は発生していませんでした。

しかし、医療技術の進歩により、お母さんも赤ちゃんも安全に出産できるようになりました。そのため、リスクのある分娩方法を取る場合、もしもの時に備えた設備や技術を持った小児科や麻酔科の医師が常駐している環境のほうが望ましいと考えています。

以下の文章は、以前のTOLACに関する情報です。現在でも参考になる内容ですので、そのまま掲載しております。ご参考にしてください。

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当院のTOLACについての説明

 

経腟分娩と帝王切開の選択について

この文章は、以前に帝王切開で出産された妊婦さんが、今回の分娩方針として経腟分娩または帝王切開のどちらかを選ぶ際に、それぞれのメリットとデメリットを理解していただくために作成したものです。わからない点がありましたら、どのようなことでも受診時に遠慮なくお尋ねください。どちらの分娩方法を選択されても、私たちは最善の対応を目指します。また、いったん同意された後でも、それを撤回することもできます。

経腟分娩のリスクと条件

帝王切開の既往がある場合の経腟分娩では、母児双方に重篤な危険を引き起こす子宮破裂の発生率が高いことが知られています。経腟分娩を行うためには以下の5項目を満たす必要があります。

  • ・児頭骨盤不均衡(母体の骨盤に比して胎児の頭が大きすぎる)がないと判断される。
  • ・緊急帝王切開および子宮破裂に対する緊急手術が可能である。
  • ・既往帝王切開数が一回である。
  • ・既往帝王切開術式が子宮下部横切開で、その術後経過が良好であった。
  • ・子宮体部筋層の手術既往(子宮筋腫核出術など)あるいは子宮破裂の既往がない。

 

経腟分娩のメリットとデメリット

メリット

  • ・より自然な分娩が期待できる。
  • ・出血量の減少と輸血量の減少(予定帝王切開の約60%)。
  • ・感染症のリスクの減少(発熱は予定帝王切開の60〜70%)。
  • ・分娩後血栓症発生のリスク減少が期待できる。
  • ・予定帝王切開より短い入院期間ですみ、分娩費用が安い。

 

デメリット

  • ・子宮破裂の発生率が高い(約0.4〜0.5%で、予定帝王切開の2〜3倍)。
  • ・破裂部位の修復術や子宮摘出術などの手術が増加。
  • ・母体の感染や輸血が増加(母体死亡に至ることはまれ、0〜0.01%)。
  • ・児の死亡率が増加(約0.5〜0.6%、予定帝王切開の1.7倍)。
  • ・出生時の状態不良が増加(約2.2%、予定帝王切開の2.2倍)。

 

また、経腟分娩を予定していても、母体や胎児の状態により帝王切開に切り替わる可能性があること、子宮破裂の症状が分娩中だけでなく分娩後にも起こることがありますので、これらにも留意してください。

 

予定帝王切開のメリットとデメリット

メリット

  • ・陣痛が始まらない限り、子宮破裂の回避が期待できる。
  • ・子宮破裂による母児への危険を回避できる。

 

デメリット

  • ・出血量の増加、輸血や感染の頻度が増加。
  • ・羊水塞栓や下肢静脈血栓による肺血栓塞栓症などの重篤な合併症のリスクが増加。
  • ・子宮以外の周辺臓器(腸管や膀胱など)を損傷する可能性。
  • ・創部感染や縫合不全のリスク。
  • ・術後腸管麻痺、腸閉塞のリスク。
  • ・経腟分娩より入院期間が長くなる。
  • ・次回以降の妊娠で前置胎盤や癒着胎盤のリスクが増加。
  • ・麻酔による偶発合併症のリスク。

 

経腟分娩成功の確率

経腟分娩の成功の確率は以下の要因により推測されます。

  • ・経腟分娩の経験があるか。
  • ・前回の帝王切開の適応理由(分娩停止の場合は6割程度)。
  • ・臨月の子宮頸管の熟化度合(子宮口の開き具合、赤ちゃんの頭の位置)。

 

まとめ

以上のことを患者さんとご家族に十分に説明したうえで、安全でかつ満足のいくお産ができるように努力させていただいています。

ちなみに、どちらも経験した妊婦さんにお聞きすると、経腟分娩、帝王切開分娩のどちらが楽だとか、どちらがいいお産だとか、そういうものではないようです。一人目が帝王切開、二人目が経腟分娩の患者さん、その逆に一人目が経腟分娩、二人目が帝王切開の患者さん、どちらの患者さんにお聞きしても「どっちもそれなりに大変だし、産み方によって赤ちゃんに対する愛情が変わるわけではない」とおっしゃいます。

実際にVBACが成功した患者さんの中には、分娩中、分娩直後には「経腟分娩がこんなに大変だと思わなかった。これなら帝王切開のほうがよかったかも」とおっしゃる方もいらっしゃいますが、三日目ぐらいになると「やっぱり楽」とか「赤ちゃんとはやく触れ合えてうれしい」と喜んでくれるようになります。

繰り返しになりますが、どちらの選択をなさっても、ご本人とご家族が「いいお産だった」と思えるように精一杯努力させていただきます。ご家族で十分にご相談の上、決定していただければと思います。

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