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有秋台医院

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種枠を増やしました。

2024.07.12

HPVワクチン(いわゆる子宮頸がんワクチン)の市原市の接種率が千葉市での接種率の半分以下ということ、また、かかりつけの患者さんから接種の予約がとれないという声を頂いたので、

市原市の皆さんを対象にしたHPVワクチンの接種枠を夏休みの間、月曜日、火曜日の午後にもつくりました。従来通り、土曜日の午後にも接種できます(予約の状況次第では、枠を拡大していきます)。

HPVワクチンの効果については、
日本産科婦人科学会 ”子宮頸がんとHPVワクチンに関する正しい理解のために

副反応については、
YOHOHAMA HPV PROJECT ”HPVワクチンの副反応に関する,名古屋スタディ-の最終結果

が詳しいです。

日本では積極的な勧奨を一時とめていましたが、
継続して接種していた世界各国で HPVワクチンの効果が明らかになり、

世界各地の研究で HPVワクチンの安全性の報告がされ、
日本においても、いわゆる名古屋スタディーの結果、有害事象が接種によって増えることがないことが明らかになっています。

接種をご希望の方は、接種を希望される方は、予約サイトより予約をお願いいたします。

以下、解説です。

HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)について

健康を守るための重要なワクチン接種

現代の医療技術は、私たちの健康を守るために重要な進歩を遂げています。その中でも、ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンは、特に女性にとって重要な役割を果たしています。HPVワクチンは、子宮頸がんをはじめとする複数のがんを予防するための効果的な手段です。

HPVは非常に一般的なウイルスであり、ほとんどの人が感染する可能性があります。しかし、多くの場合、感染は自然に治癒しますが、一部のケースではがんの発症につながることがあります。特に、HPV感染は子宮頸がんの主要な原因として知られています。

HPVワクチンは、こうしたリスクを大幅に低減するための有効な方法です。ワクチン接種により、将来的な感染の予防が期待でき、子宮頸がんをはじめとするHPV関連のがんを防ぐことができます。
当院では、女性の皆様が健康で安心して生活できるよう、HPVワクチンの接種を推奨しています。このページでは、HPVワクチンの基本情報から、その効果と安全性、接種の重要性まで、詳細に解説しています。皆様の健康を守るために、ぜひ最後までお読みいただき、ワクチン接種の一助となれば幸いです。

HPV(ヒトパピローマウイルス)とは?

ヒトパピローマウイルス(HPV)は、非常に一般的なウイルスのグループです。現在、100種類以上のHPVが存在しており、そのうち40種類以上が性行為によって感染することが知られています。HPVは、皮膚や粘膜に感染し、多くの人が一生のうちに少なくとも一度は感染する可能性があります。

HPVの種類

HPVには、低リスク型と高リスク型があります。低リスク型のHPVは、主に良性の病変(いわゆる「いぼ」)を引き起こし、高リスク型のHPVは、がんを引き起こす可能性があります。特に16型と18型のHPVは、子宮頸がんの70%以上に関与しているとされています。

感染経路

HPVは主に性行為を通じて感染しますが、性行為以外にも、皮膚と皮膚の接触によっても感染することがあります。性行為を始める前にワクチン接種を行うことで、感染のリスクを大幅に減少させることができます。

感染のリスクと予防の重要性

HPV感染は非常に一般的であり、ほとんどの人が一生のうちに少なくとも一度は感染します。しかし、多くの場合、感染は自然に治癒します。特に若年層では、免疫システムがウイルスを排除することが多いです。しかし、一部の感染は持続し、がんの前段階となる異形成やがんそのものを引き起こすことがあります。

子宮頸がんは、HPV感染が持続することによって引き起こされる最も一般的ながんの一つです。世界的には、毎年50万人以上の女性が子宮頸がんを発症し、その半数以上が命を落としています。このため、HPV感染の予防は非常に重要です。
HPVワクチンは、HPV感染を予防し、将来的ながんリスクを大幅に減少させる効果があります。特に、ワクチン接種は、性行為を始める前に行うことで、より高い予防効果が期待できます。

子宮頸がんとHPVの関係

HPVが子宮頸がんの主要な原因である

HPVは、子宮頸がんの発症に深く関与しています。HPVは、特に子宮頸部の細胞に感染し、長期間にわたって持続的な感染を引き起こすことがあります。この持続感染が原因で、子宮頸部の細胞が異常に増殖し、がん前駆病変やがんそのものに進展することがあります。実際、子宮頸がんの90%以上は、HPV感染が原因で発生しているとされています。

高リスク型HPV、特にHPV16型と18型は、子宮頸がんの70%以上に関与していることが研究で示されています。これらのウイルスは、細胞の遺伝子に異常を引き起こし、細胞の正常な増殖制御を乱すことで、がんの発生を促進します。

HPV感染が他のがん(喉頭がん、陰茎がんなど)にも関連する

HPVは子宮頸がんだけでなく、他の部位のがんにも関連しています。以下に主なHPV関連がんを挙げます:

  • ・喉頭がん: HPVは、口腔や咽頭の粘膜にも感染し、喉頭がんの一因となることがあります。特にHPV16型が、口腔咽頭がんの約70%に関与していると報告されています。
  • ・肛門がん: HPV感染は、肛門がんの主要な原因の一つでもあります。HPV16型と18型が、肛門がんの多くのケースで検出されています。
  • ・陰茎がん: 男性の陰茎がんも、HPV感染と関連しています。特に、包皮が長い男性や不衛生な状態である場合、HPV感染のリスクが高まります。
  • ・外陰がんおよび膣がん: 女性の外陰部や膣のがんも、HPV感染によって引き起こされることがあります。これらのがんは比較的稀ですが、HPVの高リスク型が関与していることが多いです。

これらのHPV関連がんは、男女問わず、性的接触を通じてHPVに感染することによって発生するリスクがあります。そのため、HPVワクチンの接種は、子宮頸がんの予防だけでなく、他のHPV関連がんのリスクを低減するためにも重要です。

各国の HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の接種率

Impact and Effectiveness of the Quadrivalent Human Papillomavirus Vaccine: A Systematic Review of 10 Years of Real-world Experience. Garland SM, et al. Clin Infect Dis. 2016.PMID: 27230391

という論文のデータでは、ヨーロッパ各国、アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、日本で比較すると以下のようになっています。

日本の接種率が各国と比較して非常に低いこと、各国でワクチンとして当たり前に接種されている状況であることがわかります。

ワクチンの効果(感染予防、がん予防)

HPVワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染を予防し、それに関連するがんの発症リスクを大幅に減少させる効果があります。特に、HPV16型および18型に対するワクチンは、これらのウイルスが原因となる子宮頸がんの70%以上を予防します。また、HPVワクチンは子宮頸がんだけでなく、肛門がん、陰茎がん、口腔咽頭がんなど、他のHPV関連がんのリスクも低減します。ワクチン接種は、感染の拡大を防ぐだけでなく、将来的ながんの発症を予防するための強力な手段です。

スウェーデンでの接種した人、接種しなかった人を調べた論文、

HPV Vaccination and the Risk of Invasive Cervical Cancer.
Lei J, et al. N Engl J Med. 2020. PMID: 32997908

は有名で、17歳以下で接種した人、17-30歳で接種した人、接種しなかった人の子宮頸癌の発症率の違いは、以下の図で示されています。

ワクチン接種率の高い国々では、子宮頸がんの患者さんの数は減っており、男子にも HPVワクチンを接種することで、HPV自体を減らしていこうという戦略にでている国も多いです。

早期接種のメリット(効果的な予防)

HPVワクチンは、ヒトパピローマウイルス(HPV)感染の予防において非常に効果的です。特に、性行為を始める前の早期に接種することが重要です。これは、ウイルスに初めて曝露する前に免疫を獲得することで、感染リスクを大幅に低減できるためです。研究によれば、HPVワクチンは早期に接種することで最大の効果を発揮し、子宮頸がんやその他のHPV関連がんの予防においても非常に高い効果が期待できます。

早期接種はまた、若い世代の健康維持に寄与し、将来的ながんのリスクを低減することで、医療費の削減や生活の質の向上に繋がります。これにより、若い女性や男性が健康で活力に満ちた生活を送るための基盤を築くことができます。

社会全体の免疫向上による集団免疫効果

HPVワクチン接種は、個人の健康を守るだけでなく、社会全体の免疫レベルを向上させることで、集団免疫効果を生み出します。集団免疫とは、一定割合以上の人々が免疫を持つことで、ウイルスの感染拡大を抑制し、免疫を持たない人々も間接的に守られる現象です。これにより、HPVの感染率が低下し、ウイルスの拡散を効果的に防ぐことができます。

特に、HPVは性行為を介して広がるため、集団免疫の効果は大きいです。より多くの人がHPVワクチンを接種することで、地域社会全体の感染リスクが減少し、HPV関連疾患の発生率が低下します。これにより、子宮頸がんやその他のHPV関連がんの予防が強化され、公共の健康が向上します。

安全性の確認と副反応について

HPVワクチンは、世界中で広く使用されており、その安全性が数多くの研究と監視プログラムによって確認されています。一般的な副反応としては、接種部位の痛み、腫れ、発赤などの局所反応が報告されています。これらの副反応は通常軽度で、一時的なものです。まれに、発熱や頭痛、筋肉痛、疲労感などの全身反応が見られることもありますが、これらも通常は短期間で改善します。

非常にまれではありますが、重篤なアレルギー反応(アナフィラキシー)が報告されることがあります。しかし、こうした重篤な反応は非常に稀であり、HPVワクチンの利点がリスクを大きく上回るとされています。

日本でもこれは、HPVワクチンによって増加するのではないかと疑われた症状について調査されました。その結果をまとめた論文が、

No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoyastudy. Sadao Suzuki, et al. Papillomavirus Res. 2018 PMAD: 29481964

です。

結果をまとめると、以下の表のようになります。

OR (Odds Ratio): ORが1より大きい場合、その症状がHPVワクチン接種に関連している可能性が高いことを示しますが、これが統計的に有意であるかどうかは95%信頼区間 (CI) を考慮する必要があります。CIが1を跨いでいる場合には、統計的に優位であるということはできません。

この結果、他のワクチンと比較して特別に危険なものではないと結論付けられており、他の研究でも同様の結果が示されています。

ワクチン接種の推奨年齢とスケジュール

HPVワクチンは、主に思春期前の少年少女に対して推奨されています。これは、性行為を開始する前にワクチン接種を完了することで、最も高い予防効果が得られるためです。日本では、HPVワクチンは標準的な接種として中学1年生(12歳前後)(対象年齢としては、小学校6年生-高校1年生相当)の女子を対象に無料で接種が推奨されています。また、現在は積極的な勧奨を控えていた期間の方を対象にキャッチアップ接種として、平成9年4月2日~平成20年4月1日生まれの方を対象に令和7年3月末まで定期予防接種(=無料接種)としての接種を行っています。

標準的な接種スケジュールは、2回または3回の接種です。具体的なスケジュールは、接種するワクチンの種類や年齢によって異なります。14歳以下で接種を開始した場合、6か月間隔で2回接種するスケジュールが一般的です。一方、15歳以上で接種を開始する場合は、0、1-2か月後、および6か月後の3回接種が推奨されます。

個人的には、当院で出産したお母さんが、小さな子どもたちを残して亡くなるのをもうみたくないです。予約が入るようならば、さらに接種ができるように頑張ります。
よろしくお願い致します。

2024/7/11 有秋台医院 院長 鶴岡信栄