実際には陣痛の痛みが全くないわけではなくではありませんが、LINE をできるぐらいな程度にはなります。

無痛の手段としての硬膜外麻酔は、他の痛み止めよりも麻酔効果が確実である、胎児への影響を認めない、帝王切開が必要になった時にも同じ麻酔方法で行うことができる、などの利点があります。詳しくは、ここから。以下、概略を説明します。

当院での無痛分娩の実績
2023年1月-12月の分娩総数 279件、
うち 経腟分娩 218件 (硬膜外麻酔による無痛分娩 66件)、予定帝王切開 31件、緊急帝王切開 30件 でした。
経膣分娩を試みた方のうち、約25%の方が、無痛分娩での分娩となっています。

硬膜外麻酔による無痛分娩の実際
当院では、しっかりとした人員を配置した上でおこなわせていただきたいため、計画分娩を基本とさせていただいています。

計画前に陣痛や破水となって分娩を行う場合もできるだけ対応いたしますが、人的対応が困難で無痛分娩が不可能なこともあります。
妊娠37週~40週を目安として、外来での診察の所見などを参考に決定します。

入院の1日目に硬膜外麻酔の準備を行います。背中(腰)から針を刺して、硬膜外腔に細いチューブを入れます。夕方から夜にかけて診察をします。子宮口が開いているかを確認し、あまり開いていないようであれば子宮口を広げるような処置をする場合があります。

入院の2日目に陣痛促進剤を点滴して分娩を誘発します。陣痛促進剤は、最初は低容量で開始し、陣痛の具合をみながら、徐々に量を増やしていきます。
陣痛のつきはじめの時期は、痛みもそれほど強くないことが多いです。分娩をきちんと進行させるためにも、通常この時期には麻酔は開始しません。
陣痛が本格的になってくると、子宮の入り口も開き始め、赤ちゃんが段々と下りてきます。このような状態になってきたら、麻酔を開始します。
自己調節硬膜外鎮痛(妊婦さんご自身が痛いと思ったときに麻酔薬を追加できる)を採用することで、患者さんご自身で痛みのコントロールが可能です。

実際に麻酔を開始する時期は痛みの程度によりますので、適宜対応することになります。
分娩誘発中は絶飲食となります。麻酔を始めたら定期的に血圧を測定します。また、力が入らずに転倒することもあるので、歩行しないようにしていただきます。

無痛分娩のメリットについて
最大のメリットは、お産の痛みが軽くなることです。

それにより、
疲労が少なかった、産後の回復が早かった、
前回は麻酔をつかわずに痛いだけで、なんだかよくわからないうちに出産していたが、
今回はあかちゃんが下りてくる感じ、股がひろげられる感じがわかって自分で産んだ気がした、
会陰切開、会陰裂傷の処置も痛くない、などの効果が期待できます。

無痛分娩のリスクについて
無痛分娩では、麻酔を使用することによって、分娩が遷延してしまったり、陣痛を感じにくいためにいきみが弱くなってしまうことがあります。
陣痛が長くあることが身体に負担になることになるような場合では、吸引分娩、鉗子分娩を必要とすることがあります。
これらの処置によって、児頭皮下や頭蓋内に血腫ができることがあります。

また、硬膜外麻酔による副作用としては、
① 足の感覚が鈍くなる、足の力が入りにくくなる:
② 低血圧:
③ 尿をしたい感じが弱い、尿が出しにくい:
④ かゆみ:
⑤ 体温が上がる:
⑥ 硬膜穿刺後頭痛:
⑦ 血液中の麻酔薬の濃度がとても高くなってしまうこと(局所麻酔薬中毒):
⑧ お尻や太ももの電気が走るような感覚:
⑨ 脊髄くも膜下腔に麻酔の薬が入ってしまうこと(高位脊髄くも膜下麻酔・全脊髄くも膜下麻酔)
⑩ 硬膜外腔や脊髄くも膜下腔に血のかたまり、膿(うみ)のたまりができること:
などが挙げられます。

いずれの副作用も早期に発見し、適切な対応ができるように医師、助産師が注意深く観察させていただきます。

無痛分娩の費用について
無痛分娩は自費診療となります。通常の分娩費用に実費 (10万円)を追加して請求させていただいております。

詳しいことを知りたい方は、
一般社団法人 日本産科麻酔科学会の 無痛分娩 Q&A を参考にしていただけるとよろしいと思います。

 

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