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市原市の産婦人科 有秋台医院です。

VBAC(帝王切開後の経腟分娩の試み)について

現在は当院では原則として、TOLAC(帝王切開後の経腟分娩の試み)を中止しております(TOACをして、成功したのが VBACです)。
当院での TOLAC で、大きな問題はおこったことはこの地で開業させていただいて40年経過していますが、ありませんでした。

しかし、医療技術の進歩によりお母さんも赤ちゃんも安全に出産に臨むことができるようになり、リスクのある分娩法をとる場合、もしものときに備えた設備、技術をもった小児科、麻酔科の先生の常駐している環境のほうが望ましいと考えるからです。

以下の文章そのものは現在でも変わらないものなので、そのまま残しております。ご参考にしてください。

この文章は、以前に帝王切開で出産された妊婦さんが、今回の分娩方針として、経膣分娩あるいは帝王切開術のどちらかの分娩方法を選ぶにさいして、それぞれのメリットとデメリットを理解していただくために、作成したものです。わからない点がありましたら、どのようなことでも構いませんので受診時に遠慮なくお尋ねください。
なお、どちらの分娩の方法を選択されても、私たちは最善の対応をめざします。

また、いったん同意されたあとそれを撤回することもできます。

帝王切開の既往がある場合の経膣分娩では、母児双方に重篤な危険を引き起こす子宮破裂の発生率が高いことが知られていますが、帝王切開と比べてどちらが安全かについてはこれまで明確な結論が得られていません。また、経膣分娩経過中に子宮破裂の危険性を予知することは困難と考えられています。

経腟分娩を行うことのできる条件

帝王切開後に経膣分娩を行うことができる条件として、一般に以下の 5項目があげられています。

児頭骨盤不均衡(母体の骨盤に比し胎児の頭が大きすぎる)がないと判断される。
緊急帝王切開および子宮破裂に対する緊急手術が可能である。
既往帝王切開数が一回である。
既往帝王切開術式が子宮下部横切開で、その術後経過が良好であった。
子宮体部筋層の手術既往(子宮筋腫核出術など)あるいは子宮破裂の既往がない。
この 5項目をすべて満たしている場合にのみ、分娩方針として経膣分娩を選択できると考えられています。

経腟分娩を方針とした場合のメリットとデメリット

メリット
成功すれば、以下の帝王切開に伴う危険性を回避できる。

より自然な分娩が期待できる。
出血量の減少と輸血量の減少(予定帝王切開の約60%)。
感染症のリスクの減少(発熱は予定帝王切開の60~70%)。
分娩後血栓症発生のリスク減少が期待できる。
予定帝王切開より短い入院期間ですみ、また分娩費用が安い。

デメリット
子宮破裂の発生率が高い。約0.4%~0.5%で、帝王切開を予定した場合に 2~3倍。
破裂部位の修復術や子宮摘出術などの手術が増加。
母体の感染や輸血が増加。*母体死亡にまで至ることはまれ(0~0.01%)
児の死亡数が増加。約0.5%から0.6%(予定帝王切開の1.7倍)。
出生時の状態不良が増加。約2.2%(予定帝王切開の2.2倍)。
また、経腟分娩を予定していても、母体、胎児の状態により帝王切開に切り替わる可能性があること、子宮破裂の症状は必ずしも分娩中におこるわけではなく、分娩終了後におこることもあること、にも留意していただきたいです。

予定帝王切開を方針とした場合のメリットとデメリット

メリット
陣痛が始まらない限り、子宮破裂の回避が期待できる。
子宮破裂により引き起こされる母児への危険(上記)を回避することが期待できる。

デメリット
帝王切開によっておこる以下の合併症の可能性が高くなる。

経膣分娩に比べて出血量が増加し、輸血や感染の頻度が増加する。
羊水塞栓や下肢静脈血栓による肺血栓塞栓症などの重篤な合併症が発生する可能性が増加する。
子宮以外の周辺臓器(腸管や膀胱など)を損傷することがある。
創部感染や縫合不全を起こすことがある。
術後腸管麻痺、腸閉塞を起こすことがある。
経膣分娩より入院期間が長くなる。
次回以降の妊娠では、前置胎盤や癒着胎盤のリスクが増加する。
麻酔による偶発合併症がおこることがある。

経腟分娩成功の確率

経腟分娩の成功の確率は

経腟分娩をしたことがあるか
前回の帝王切開の適応がなんであったか(前回の適応が分娩停止の場合は 6割程度)
臨月の子宮頸管の熟化度合(子宮口がどれだけ開いているか、赤ちゃんの頭がさがっているか)
によって推測が可能です。

まとめ

以上のことを患者さんとご家族に十分に説明したうえで、安全でかつ満足のいくお産ができるように努力させていただいています。

ちなみに、どちらも経験した妊婦さんにお聞きすると経腟分娩、帝王切開分娩のどちらが楽だとか、どちらがいいお産だとか、そういうものでもないようです。

一人目が帝王切開、二人目が経腟分娩の患者さん、その逆に一人目が経腟分娩、二人目が帝王切開の患者さん、どちらの患者さんにお聞きしても「どっちもそれなりに大変だし、産み方によって赤ちゃんに対する愛情がかわるわけではない」とおっしゃいます。

実際に VBAC が成功した患者さんの中には患者さんのなかも、分娩中、分娩直後には「経腟分娩がこんなに大変だと思わなかった。これなら帝王切開のほうがよかったかも」とおっしゃるかたもいらっしゃいますし(三日目ぐらいになると、やっぱり楽、とか、赤ちゃんとはやく触れ合えてうれしいと喜んでくれるようになりますけどね)。

繰り返しになりますが、どちらの選択をなさっても、ご本人とご家族が、”いいお産だった” と思えるように精一杯努力させていただきます。ご家族で十分にご相談の上、決定していただければと思います。